離婚前提の妻でも溺愛されています
「そういえば部長、今日って支店長会議に出席するんですよね。時間は大丈夫ですか?」

「そろそろ出ないとまずいな。じゃああとは三人で選んで……くれぐれも妥協なんてせずに――」

「わかってます。存分に素敵な商品を選ばせていただきますから安心して戻って下さい」

「わかった。慌ただしくてすみません」

蒼真は佳也子に軽く頭を下げると、里穂に「今日は遅くならないと思う」と声をかけて足早にショールームを後にした。

「本当に忙しそうね。雫は戻らなくていいの?」

佳也子に問われ、雫は「大丈夫」とあっさり答える。

「今日は部長の方から休んでもいいって言ってくれたし」

「そうなの?」

里穂が首をかしげる。

「お姉ちゃんから今日ショールームに行くって聞いて、私も行ってきたらって気にかけてくれたのよね。気配り上手な上司は最高でしょ」

「本当に最高ね」

佳也子は感心し、しみじみとつぶやく。

「私たちのことを考えて下さって、申し訳ないわね。里穂も蒼真さんのために力を尽くすのよ。杏華堂のような大企業の社長夫人なんて、片手間じゃできないんだから」

「うん、わかってる」

社長夫人といえば杏を思い出すが、彼女の忙しさや社長を支える献身ぶりは想像以上だと、蒼真と結婚してから実感している。

それに片手間でできないこともわかっている。

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