離婚前提の妻でも溺愛されています
「頑張って蒼真さんを支えていかなきゃね。お店のことなら蒼真さんのおかげでなんとかなりそうだし、大丈夫よ。ね、雫」

「専属の皿洗いもいることだし、安心してよ。ね」

「なんの話?」 

皿洗いが恭太郞のことだというのはわかるが、今ひとつピンとこない。

「ふふ、里穂には蒼真さんと仲良くしてほしいってことよ。でも、そんな心配いらないみたいね。ふたりはラブラブだもの。今日も私の方が照れちゃったわ。ね、雫」

「私は慣れちゃったけど」

呆れ顔で笑いながら、雫が言葉を続ける。

「この間会社でお店の改装の話になった時に、すぐには無理だけど費用はお返ししますって言ったら、気にする必要はないってばっさり。それにお姉ちゃんと結婚できたのが、よーっぽどうれしいみたい。よくお姉ちゃんが作るご飯は最高にうまいって惚気られるし。まさにベタ惚れだね」

それは雫の勘違いだ。

そうでなければこの結婚に疑問を持っていた雫にそう思わせるようひと芝居打っているのかもしれない。
 
蒼真が里穂と結婚したのは常務の思惑を阻止し、そして雫と恭太郞を結婚させるため。
 
そこに溺愛どころか愛情が入り込むことはない。

あるとすれば家族愛のようなもの。それだけだ。
 
とくに今は、麗美の件でこれまで以上に里穂を気遣っている。 
 
それこそ昨夜、好きでもない里穂を抱いて慰めてくれるほど。

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