離婚前提の妻でも溺愛されています
店の看板メニューだというチーズケーキに舌鼓をうちながら、佳也子がメニューに目を通している。 

「そういえば、蒼真さんはチーズが好きって言ってたわね。お土産にいくつかどうかしら」

「今日はやめておこうかな。お土産には他に考えているのがあるから、それを買って帰ろうと思っていて――」

「ニューヨークっていってもチーズケーキどころじゃないよ。見て」

スマホを眺めていた雫が慌てた声でそう言って、スマホをテーブルに置いた。

「ニューヨーク? え、爆発?」
 
ニュースアプリの画面に、ニューヨークの飲食店で爆発事故が発生したとある.。
 
場所は飲食店が軒を連ねる大きな通りでオフィス街も近い。

詳細は調査中とあるが、日本人が数人巻き込まれているようだ。

「被害が小さいといいわね」

佳也子が心配そうに画面を見ている。

「うちもガスの事故とか気をつけなきゃね。火事でも起こしたら大変。恭太郞にもちゃんと言っておこうっと。まあ、恭太郞は意外に丁寧で慎重だから大丈夫かな」

「またそんなこと言って」

雫は恭太郞をバイトのように扱う雫に苦笑した。

「あら、もうこんな時間なのね。夕方カラオケの集まりがあるから急がなきゃ」

のんびりチーズケーキを頬張っていた佳也子が、慌てて手を動かし始めた。

「私も。恭太郞とご飯を食べに行くの、忘れてた」

「忘れてたって、いつもそうなんだから」

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