離婚前提の妻でも溺愛されています
どっぷり恭太郞に甘えている雫に呆れ、里穂もコーヒーを飲み干した。

 


カフェを出て佳也子と雫をタクシーに乗せたあと、里穂は以前から気になっていた場所に向かった。
 
そこは有名なハイブランドの旗艦店が軒を連ねる繁華街の中心にある、高級ホテル。
 
もちろん里穂にこれまで縁はなく、宿泊したこともない。
 
けれど人生はなにが起こるかわからない。

十一月にはここで結婚式を挙げる予定だ。

「たしか、ワインのお店の隣にあったはず」
 
里穂はホテルのショッピングフロアに足を踏み入れ、目当てのチーズを探した。
 
結婚して知ったことだが、ワインを好む蒼真は、チーズに目がない。
 
中でも好きな種類があって、それがこのホテルで販売されている。

結婚式の打ち合せでここに来た時に蒼真が会話の流れでチラリと言っていたのを覚えていて、今日買いに来たのだ。

もともとそのつもりだったので、佳也子にチーズケーキをお土産に勧められてもやめておいたのだ。

「あった」

店を見つけた里穂は、いそいそと中に入っていった。

 


蒼真のお気に入りはフランス産のフレッシュチーズで、里穂も何度か口にしたが、バターのようにとろける口当たりのいいチーズだ。
 
この間冷蔵庫の中のストックがなくなったと肩を落としていたので、きっと喜んでくれるはず。

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