離婚前提の妻でも溺愛されています
「私は蒼真さんの妻になれたらそれでいいの。姉の結婚相手は姉を溺愛しているから離婚なんて絶対にできない。きっとアメリカでの生活に苦労して後悔してるんだろうけど、いまさら遅いのよ。お見合いの話があった時にごねずに蒼真さんと結婚していれば誰も苦しまなかったのに。ふん、いい気味」
「麗美さん?」
狂気すら感じられる麗美の表情に、里穂は不安を覚えた。それは昨夜感じた恐怖とは桁違いの強さで、里穂は無意識に後ずさり、麗美との距離を取った。
どこか奇妙な様子の麗美に、ロビーを行き交う人たちもチラチラと視線を向けている。
一瞬蒼真に連絡してここに来てもらおうと考えたが、同時に沙耶香の顔が頭に浮かび、あきらめた。
「離婚したくても離婚できなくて苦しむ姉を想像するだけでゾクゾクする。そのうえ自分が手放した蒼真さんと私が結婚したら、それこそ自分の人生を後悔して二度と日本にも帰ってこないかも。それこそ望むところ。あの人の顔なんて一生見たくない」
宙を見据えながらきっぱりとそう言った麗美は、その瞬間気持ちが落ち着いたのか、途端に表情を和らげた。
いったい彼女になにがあったのか、麗美のことがまるでわからない。
「ねえ、杏華堂の社長夫人って最高だと思わない? 一生楽しく暮らせるはずよね。あなたもそれが狙いだったんでしょう?」
「麗美さん?」
狂気すら感じられる麗美の表情に、里穂は不安を覚えた。それは昨夜感じた恐怖とは桁違いの強さで、里穂は無意識に後ずさり、麗美との距離を取った。
どこか奇妙な様子の麗美に、ロビーを行き交う人たちもチラチラと視線を向けている。
一瞬蒼真に連絡してここに来てもらおうと考えたが、同時に沙耶香の顔が頭に浮かび、あきらめた。
「離婚したくても離婚できなくて苦しむ姉を想像するだけでゾクゾクする。そのうえ自分が手放した蒼真さんと私が結婚したら、それこそ自分の人生を後悔して二度と日本にも帰ってこないかも。それこそ望むところ。あの人の顔なんて一生見たくない」
宙を見据えながらきっぱりとそう言った麗美は、その瞬間気持ちが落ち着いたのか、途端に表情を和らげた。
いったい彼女になにがあったのか、麗美のことがまるでわからない。
「ねえ、杏華堂の社長夫人って最高だと思わない? 一生楽しく暮らせるはずよね。あなたもそれが狙いだったんでしょう?」