離婚前提の妻でも溺愛されています
裏切らないというのは、浮気をしないという意味だと理解していたが、考えてみれば恋愛

感情を介さないふたりの関係に浮気というシチュエーションが当てはまるのかは疑問だ。
 
だったら蒼真はどういうつもりでそんな言葉を口にしたのだろう。
 
考えれば考えるほど混乱してわからなくなる。

「ふう……」

リビングのソファに浅く腰かけ、里穂はため息を吐いた。

この二日間で想定外のことがありすぎて受け止めきれない。
 
昨夜蒼真に抱かれた身体からはすっかり熱が冷め、まるでなにもなかったかのようだ。
 
ただ、今も残る下腹部の鈍い痛みと胸元に残っている赤い華。

蒼真に与えられたキスマークだけが昨夜の交わりが夢ではなかったと教えてくれる。
 
気分を変えようとテレビをつけると、ニュース番組で女性アナウンサーがニューヨークの爆発事件がテロだったと伝えている。
 
巻き込まれた日本人五人が病院に搬送されたが、生死を含め詳細は確認できていないらしい。
 
爆破されたレストランの惨憺たる状況が画面に映し出された時、里穂は思わず画面を消した。
 
父が巻き込まれて亡くなった、高速道路の玉突き事故の現場の映像がよみがえってつらくなったのだ。
 
なんの前触れもなく突然家族を失った悲しみは、七年経った今も消えていない。
 
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