離婚前提の妻でも溺愛されています
一瞬でキスに夢中になり、こうして息を乱している自分を見られるのは恥ずかしい。

けれど蒼真への想いがそれに勝ち、キスだけで身体は歓び夢中にならずにいられなくなる。

「大丈夫か?」

吐息が触れるほど近くに顔を寄せて、蒼真が心配そうに眉を寄せた。

「平気です」

「ん……」

蒼真はそれ以上なにも言わず、里穂の顔を手の平で撫で続ける。

相変わらず、里穂の存在がここにあると確かめているように。

「里穂」

合間に聞こえる蒼真の声がひどく切なくて、なにかあったのは間違いない。

長く胸にしまい込んでいた想いが沙耶香に届いて、ふたりの関係に変化が生まれたのかもしれない。

もしもそうなら、この結婚にも変化が必要になってくる。最終的には離婚という変化が。

「里穂」

沙耶香とのことで悩む蒼真を見ていられなくて、里穂は固く目を閉じた。

「蒼真さん、お聞きしてもいいですか?」

もともと事情が解決すれば離婚する前提だったのだ、蒼真が望むなら早い方がいい。

「私、実は昨日、結婚式を挙げる予定のホテルで蒼真さんを見かけたんです」

本当はそのことに触れたくない。けれどそれ以上に蒼真が苦しむ姿は見たくない。

「蒼真さんには大切にしていただいて、お店のことも妹のことも、本当にお世話になりました。感謝してます。だから今度は私が蒼真さんのためになにかしてあ
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