離婚前提の妻でも溺愛されています
げたくて。もしも……もしも離婚したいなら、すぐにでも私は……え、蒼真さん?」

覚悟を決めて離婚と口にした時、蒼真の身体がぐらりと揺れて、そのままソファの上に勢いよく押し倒された。

ソファの上で蒼真の身体に覆い被さられた里穂の身体は、重みで身動きひとつ取れない。

「蒼真さんっ? あの、どうしたんですか」

声をかけてみても、蒼真は里穂の肩に顔を埋めたままピクリとも動かない。

「え、どうしよう」

里穂の呼びかけになんの反応も見せない蒼真に慌てて、必死で蒼真の身体から抜け出し起きあがると。

「もしかして、寝てる……?」

蒼真の口から規則正しい寝息が聞こえてきた。見れば背中も途切れることなくゆっくりと上下している。

「もう」

勇気を出して離婚を切り出したというのに、この様子だとその言葉は届いていない。

身体から力が抜けていく。

がっかりした反面、ホッとし、よかったと、安心しているのも確かだ。

というよりも、安心している気持ちの方が大きいかもしれない。

里穂は苦笑し、蒼真の顔を覗き込んだ。

よほど疲れているのか里穂がソファから下りてもまるで気づかず眠り続けている。

目の下のクマが痛々しくて、指先でそっと触れてみても同じ。

穏やかな寝顔で気持ちよさそうに寝息を立てている。

里穂は寝室から持ってきたブランケットを蒼真の身体にかけた。

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