離婚前提の妻でも溺愛されています
ほんの少しだけのつもりが、すっかり眠ってしまった。

時計を見ると十二時を回っていて、五時間以上も寝ていたことになる。

おかげで身体は軽く、頭も昨日よりスッキリしている。

それにしても、蒼真はあれほど顔色が悪く疲れていたのに今日も仕事だ。

身体を壊さないか心配になる。

一瞬、仕事だと噓をついて今日も沙耶香と会っているかもしれないと頭に浮かんだが、すぐにそれを打ち消した。

愛社精神に溢れなにより仕事を大切にしている蒼真が、その仕事を理由にして噓をつくとは思えない。

それは蒼真の信条に反しているような気がする。

もしも沙耶香と会うのなら、噓などつかず、もしくはなにも言わずに会いに行くはずだ。

少なくとも今日は、メモに書いているとおり会社に顔を出しているはずだ。

だからといって、沙耶香のことがスッキリ解決したわけではないが……。

「……なにか食べよう」

冷蔵庫を覗くと、昨日蒼真のために用意した料理が並んでいる。

「……ない?」

容器に詰めて手前に置いたはずのだし巻きが見当たらないことに気づき、里穂はキョロキョロと辺りを見回した。

するとシンクにすっかり空っぽになった容器が置かれているのを見つけた。

「蒼真さん?」

それ以外に考えられない。

いつ家を出たのかまったく気づかなかったが、蒼真は冷蔵庫にあるだし巻きに気づいて、全部食べて行ったようだ。

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