離婚前提の妻でも溺愛されています
「初めまして。小(こ)坂(さか)沙耶香と申します。お忙しい中お呼び立てして申し訳ありません」

里穂は目の前の女性、沙耶香を食い入るように見つめた。

少し垂れ気味の目が印象的な顔は、蒼真から見せてもらった台湾旅行の写真と変わっていない。ノーメイクでショートカットというのもそのままだ。

「妹が、麗美がご迷惑をおかけして、本当に申し訳ございません」

「いえ、それは……でも、彼女がどうしてここに?」

この状況が理解できず、里穂は助けを求めるように杏に顔を向ける。

「彼女はうちの遠縁にあたるんだけど、遠すぎてややこしいから親戚のお嬢さんでいいわ」

「はい……?」

里穂はぼんやり答えた。

親戚のお嬢さんがここにどうしているのかわからず、頭が混乱している。

「沙耶香ちゃんも里穂ちゃんもとりあえず座りましょう。里穂ちゃん、お昼は食べたの?

ここのミックスサンドはなかなかよ。せっかくだから頼みましょうか?」

「はい、じゃあお願いします。あと、アイスコーヒーを」

里穂は沙耶香を気にしながら杏の隣に腰を下ろした。

考えてみれば、杏から電話をもらってすぐに家を出てここに来たので、今日は朝からなにも食べていない。

「里穂さん」

向かいの席に再び座った沙耶香が、神妙な顔をして里穂を見つめている。

「はい。あ、申し遅れました。桐生里穂です。初めまして」

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