離婚前提の妻でも溺愛されています
軽く頭を下げながら、実は昨日蒼真と一緒にいるのを見かけていることを思い出して、わずかに口元が歪んだ。
「こちらの都合に合わせて急に来ていただいてすみません。実はこのあとの便でアメリカに戻るので時間がなくて……。こちらからお伺いするべきなのにすみません」
「私なら大丈夫です。それより、あの、どうして私がここに呼ばれたのかわからなくて」」
「実は今朝、妹から電話があって、昨日私と桐生君のことでありもしないでたらめを言って里穂さんに桐生君と離婚するように迫ったと聞いて……本当にすみません」
沙耶香は絞り出すような声で謝罪しテーブルに額がつくほど頭を下げた。
「昨日、桐生君と私がホテルで一緒にいるところを見かけたそうですね。でも里穂さんが悲しむようなことはなにもありません。昨日は私……」
沙耶香は頭を下げたまま、突然黙り込んだ。
見ると肩を震わせ、しゃくり上げている。
「沙耶香さん?」
里穂は慌てて声をかけた。
「沙耶香ちゃん、もう大丈夫なんだからしっかりしなさい」
杏のピシャリとした声に沙耶香は顔を上げ、頰に流れている涙を手の甲で拭う。
「ごめんなさい。ホッとしたら涙が止まらなくて」
沙耶香は涙で濡れた目を細め、小さく笑った。
「昨日ニューヨークで起きたテロ事件で日本人が巻き込まれたことはご存じですか? そのうちのひとりが私の夫なんです」
「こちらの都合に合わせて急に来ていただいてすみません。実はこのあとの便でアメリカに戻るので時間がなくて……。こちらからお伺いするべきなのにすみません」
「私なら大丈夫です。それより、あの、どうして私がここに呼ばれたのかわからなくて」」
「実は今朝、妹から電話があって、昨日私と桐生君のことでありもしないでたらめを言って里穂さんに桐生君と離婚するように迫ったと聞いて……本当にすみません」
沙耶香は絞り出すような声で謝罪しテーブルに額がつくほど頭を下げた。
「昨日、桐生君と私がホテルで一緒にいるところを見かけたそうですね。でも里穂さんが悲しむようなことはなにもありません。昨日は私……」
沙耶香は頭を下げたまま、突然黙り込んだ。
見ると肩を震わせ、しゃくり上げている。
「沙耶香さん?」
里穂は慌てて声をかけた。
「沙耶香ちゃん、もう大丈夫なんだからしっかりしなさい」
杏のピシャリとした声に沙耶香は顔を上げ、頰に流れている涙を手の甲で拭う。
「ごめんなさい。ホッとしたら涙が止まらなくて」
沙耶香は涙で濡れた目を細め、小さく笑った。
「昨日ニューヨークで起きたテロ事件で日本人が巻き込まれたことはご存じですか? そのうちのひとりが私の夫なんです」