離婚前提の妻でも溺愛されています
第八章 それぞれの新しい光
第八章 それぞれの新しい光

いよいよ ささはらの改装工事が終わり、来週からの営業再開を決めた。
 
内装や外装、ともに一新されたのはもちろん、気がかりだった耐震性能が強化されたことがなによりうれしい。

年配客が多いので非常時に客たちを守れるかどうか、不安だったのだ。

「わー冷蔵庫大きい。これってお店でよく見る業務用? あ、このオーブンも。すごく使いやすそう」

雫は店のあちこちを確認しながらはしゃいでいる。

すでに新しい調理器具や電化製品も搬入されていて、大きな吊り戸棚には、蒼真が千堂から購入した食器もずらりと並んでいる。

蒼真は今ふたりから離れ、テーブル席でタブレットを眺めている。

それは先週開催されたメイクの講習会の映像で、里穂が花音にピアノを教えている様子を何度も見ているのだ。

『俺、ピアノを弾いている里穂が、本当に好きなんだ。いくらでも見ていられる』

最近は多少慣れたが、沙耶香の夫の件があって以来、蒼真は恭太郞にも呆れられるほど想いを隠さず口にするようになった。

愛してるは人が一生をかけて伝えられる以上の回数を、この二カ月で言われているといってもいいくらいだ。

そして蒼真と同じくらい、里穂もその言葉を返している。

「久しぶりの豚汁、やっぱりうまそう」

「だよねー。私も最近お姉ちゃんに教わって修行中。まだまだ敵わないけど」

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