離婚前提の妻でも溺愛されています
「来週大会があるとか言って週に三回は行ってる。本当に元気よね。これでひとり暮らしになったらカラオケ三昧になりそうで心配」 

苦笑する雫に、里穂もうなずいて見せた。

そう、佳也子は仮住まいとして暮らしているマンションにそのまま残ると言い出し、結局これからもひとりで暮らすことになった。
 
足にハンディがある佳也子にとって、階段がないマンションは、それだけで住みやすいらく、ここに戻ってくるのを拒否したのだ。

この状況になって蒼真が打ち明けてくれたのだが、仮住まいのマンションは蒼真が所有している物件で、投資で得た利益で購入して一年、空き室のままだったそ
うだ。

空き室のままでは部屋の劣化が進みやすいらしく、蒼真にとっても渡りに船。

佳也子のひとり暮らしが早々に決定した。

その時、玄関の扉が開く滑らかな音が店内に響いた。

「すみません、今日はまだ営業していないんです……え?」

カウンターを拭いていた里穂は、顔を覗かせた女性の姿にハッとした。

あの日ホテルで声をかけられて以来顔を合わせることがなかった麗美が立っている。

里穂は店に危害でも加えられないかと緊張し、表情を強張らせた。

「私のことを散々な目にあわせておいて、店のオープン? 調子に乗りすぎじゃないの?」
 
麗美は毒々しい言葉を吐きながら店に入ってきた。

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