離婚前提の妻でも溺愛されています
以前は長かった髪を肩のあたりで揃えていて、メイクはあっさりと済ませている。

おまけに装いはベージュのパンツスーツだ。イメージの変化に違和感を覚えていると。

「あなたがいなかったら私が蒼真さんと結婚して姉を見返してやれたのに。姉よりい幸せになって見せつけて、逃げ出したことを後悔させるつもりだったのに」

変化は見た目だけだったようで、口から出る言葉は相変わらず刺々しい。

すると麗美は里穂を守るように寄り添った蒼真に向けて舌打ちをし、顔をしかめた。

「それになんの恨みがあるのか知らないけど、あれだけの長い付き合いだったうちの会社もばっさり切ったのよね。おかげでリストラの話が出るほど売上げが落ちて大変なのよ」

「ばっさり切ったわけじゃない。取引高が減っただけで、付き合いは続いている。誤解しないでほしい」

きっぱりと言い放つ蒼真に、麗美はさらに顔を歪める。

「ふん、そんなこと言ってるけど、そのうち完全にうちを切るんでしょう? 言っておくけど、うちより質が高い顔料を供給できる会社は少ないわよ。うちを切ったら絶対に後悔するから」
 
やはり、以前とは違う。

里穂は麗美の様子に違和感を覚え、まじまじと見つめた。

相変わらずの毒舌で棘だらけ。

思わず耳をふさぎたくなる言葉ばかりを口にしているが、なにかが違う。

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