離婚前提の妻でも溺愛されています
「本当のことだからいいでしょ。部長もそう思いますよね。姉は昔から綺麗だって有名で、今もお客さんたちの人気者なんです。ね」

雫は近くのテーブルで食事をしていた常連の客に気安く声をかける。
 
「だな。里穂ちゃんは昔からここらで評判の美人さんだ」

「冗談言わないで下さい。雫も、部長さんにそんな口の利き方は失礼でしょ」

里穂は雫をやんわりたしなめる。

昔から雫は人見知りすることなく誰とでもすぐに打ち解け仲良くなるが、まさか職場でも同じ調子なのかとヒヤヒヤする。

「部長はそんなの気にしないから大丈夫。それよりカウンターでもいいですか?」

雫は店内を見回し五つあるテーブル席が埋まっているのを確認しつつ、桐生を空いているカウンターに促した。

「部長、ビールでいいですか?」

「笹原は飲まないのか?」

桐生は腰を下ろそうとしない雫に問いかける。

「私は姉を手伝うので、部長は気にせず飲んでいて下さい。そのうち恭太郞も来るはずです。お料理はどうしますか? メニューならそこですけど、どれもおいしいですよ」

「じゃあ、適当にいくつか見繕ってくれるか」

「わかりました。じゃあおすすめの和風ロールキャベツを用意しますね。絶品なんです」

「雫、こっちは気にしなくていいわよ。せっかくだから部長さんとゆっくりしなさい」
 
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