離婚前提の妻でも溺愛されています
桐生が気に入っているロールキャベツもたくさん作っておこう。

それに意外に甘いものが好きで、プリンが好きだと雫が言っていた。

プリンなら何度もつくっている得意のスイーツだ。里穂は頭の中でメニューを組み立て始めた。

「残念ながらあとしばらくはささはらに行けそうにないんですが」

「あ、はい」
 
桐生の声に、里穂は我に返る。

プリンの出番はしばらくはなさそうだ。

「もしよければ、いつもおいしい食事を用意してくれるお礼に、これからお昼をごちそうさせてもらえませんか?」
 
続く桐生の言葉に、里穂は目を開いた。

「お礼って、そういうわけにはいきません。私が料理をお出しするのは当然で、お代もいただいていますし、とんでもないです」

桐生からの礼などあり得ない。

「私の方が、小山さんのことでお礼をしたいくらいなのに。気を使わないで下さい」

「何度も言ってますが、そのことならいいんです。俺にとってもささはらは大切な場所だから意見させてもらっただけで、気にしないで下さい」

「そういうわけには」

あの日以来何度か礼をしたいと伝えているが、桐生は頑として受け付けてくれない。

せめてもと思い食事代を断ってもそれすら受け入れてもらえないのだ。

「あれから、なにもないですか?」
 
心配そうに顔を歪めた桐生に、里穂は大きくうなずいた。

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