離婚前提の妻でも溺愛されています
第二章 プロポーズは桜の木の下で
第二章 プロポーズは桜の木の下で

(蒼真side)

四月半ば。

杏華堂は創業五十周年を迎え、ホテルの大宴会場で記念パーティーが催されていた。

招待客の中には政財界の重鎮や芸能関係者の顔もちらほら見える。

グループ企業や取引先からの出席も多く、社長を始め取締役たちの周囲には挨拶の順番を待つ長い列ができている。

立食形式の会場内にはホテル自慢の手の込んだ料理がふんだんに用意され、宴は和やかな雰囲気の中、順調に進んでいた。

杏華堂は海外展開にも積極的なことから日本語以外の言語もあちこちで飛び交っていて、英語が堪能な雫は精力的に通訳にあたっている。

もともと人柄のよさで誰からも好かれる雫はここでもその長所を発揮し、生き生きとした表情で会場内を動き回っていた。

「雫、昼にサンドイッチをひとつつまんだだけなんだよ。少しは休めばいいのに」

会場の奥で恭太郞が雫を見つめながら心配そうにつぶやいている。

恭太郞は前期の営業成績優秀者として式典に参加していて、全国から集まった優秀者を代表して社長から表彰されていた。

「蒼真、いくらなんでも働かせすぎじゃないのか?」

「本人がやる気全開だから仕方ないだろ」

雫のこととなると無駄に過保護になる恭太郞に、蒼真は面白がるように答えた。

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