離婚前提の妻でも溺愛されています
「見てみろ、笹原と大笑いしているあの女性、イギリス支店の支店長だ。娘さんが日本に留学中だと聞いて、笹原が世話を焼いてるらしい。おかげでイギリスのうちの売上げはこの一年で右肩上がり。支店長が笹原に恩を感じて社員に檄を飛ばしてるって話だ」

雫は会場の真ん中でハイブランドのスーツを着こなすスラリとした金髪の女性を相手に顔をくしゃくしゃにしながら笑っている。

「ジュリアちゃんだろ?」

「知ってるのか?」

蒼真は目を開き振り向いた。

「雫の母校に留学中ってのもあって、色々相談にのってるんだよ。去年のハロウィンはささはらの仮装パーティーにも参加してたし、常連さんとも仲良し。夏に帰国するから、雫は今から寂しいって言ってる」

「ハロウィン……? 仮装?」

「そうだよ。俺がドラキュラで雫はかぼちゃ。これがまたかわいくてさ。アクスタつくって俺の部屋に並べてるんだよなー。で、ジュリアちゃんは里穂さんが成人式の時に用意した振袖を着せてもらって大喜び。仮装じゃないとか余計な突っ込みはいらないからな。ちなみにその時俺が撮った写真がイギリス支店の支店長室に等身大で飾ってある」

「アクスタ……等身大……?」

蒼真は呆然とつぶやいた。

「なにも聞いてないぞ」

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