離婚前提の妻でも溺愛されています
「それはそうだろ。あれだけ俺と雫がささはらに来いって誘ってたのに興味ゼロ。全然来る気なかっただろ。クリスマスパーティ―も夜通し盛り上がったのにさ」

恭太郞は拗ねた口ぶりでそう言って、蒼真にチラリと視線を向ける。

「それは……まあ、確かに興味はなかったからな」

蒼真は気まずげに答えた。

会社だけでなくプライベートの時間にまで恭太郞と雫のデレデレぶりを見せつけられるのが面倒で、ささはらだけでなく誘いはすべて断っていたのだ。

何度も絶品の料理を食べにささはら来るよう粘られたが、その気になることはなかった。

ささはらのことは雫の姉が切り盛りしていると店ということだけは認識していたが、とくに興味はなかったのだ。

状況が変わったのは、増設したラインの稼働を見届けるために工場に出向いていた日のアクシデントとでもいうべき出来事がきっかけだ。

工場とはかかわりのない常務が、見合い相手の女性を連れてわざわざ工場まで押しかけてきたのだ。

見合い相手の島田麗美は、叔父でもある常務の妻の姪。つまり蒼真とは遠戚関係にある。

もともとどんな相手であれ結婚する気などなかった蒼真は、麗美が勝ち気でわがままな性格だと耳にしていたことも相まって頑として見合いを断っていたのだが、あきらめの悪い常務が工場にまで押しかけてきて、その場で麗美と見合いするよう迫ったのだ。

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