離婚前提の妻でも溺愛されています
麗美からの悪態など気にしていないようだ。

「わかった。塩は大切にってことだな」

恭太郞は真剣な表情でうなずいた。

「里穂さんのことを思い出したら里穂さんの料理が食べたくなってきた。だし巻き最高っ」

「恭太郞、うるさい。なにか飲んで落ち着いた方がいいよ。部長にもなにかもらってきましょうか?」

雫の問いに、蒼真は首を横に振る。

「ありがとう。今はいい。それより恭太郞を少し落ち着かせてやってくれ」

「わかりました。恭太郞、大好きなジンジャーエールでも飲もう」

「OK」

恭太郞と雫が飲み物を取りに行く楽しげな背中を眺めながら、蒼真は肩をすくめた。

「だし巻きか」

ふと里穂の顔を思い出す。

ふたりで鰻を食べに行って以来、出張続きでささはらには顔を出せていない。

『近いうちに手作りのプリンをメニューに加えますので、是非食べて下さい』

あの日里穂がそう言っていたのを思い出した。

話の流れで子どもの頃からプリンが好きだと話したことを覚えていてくれたようだが、あれから十日あまり、そろそろメニューに加わった頃だろうか。

「というか……」

蒼真はクスリと笑う。

客が食べたいと言えばメニューになくても用意する彼女のことだ、翌日には冷蔵庫にプリンを並べていたに違いない。

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