離婚前提の妻でも溺愛されています
雫たちのためとはいえ離婚前提で結婚するというのはアリなのだろうか。

自分の価値観では処理できない提案に、里穂の心が大きく揺れる。

「メディカルメイク事業を確実に残すためにも、俺と結婚してほしい」

ここぞとばかりに言葉を重ねる蒼真の勢いに気おされて、蒼真との結婚が全ての問題の解決策のような気がしてくる。

「君を大切にするし、絶対に裏切らない。だから俺に君の人生を預からせてもらえないか？俺には君が必要なんだ」

熱い眼差しと言葉を向けられて、心臓が大きく跳ねる。

あり得ないとわかっていても、まるで本当に自分が蒼真から妻として求められていると、錯覚してしまいそうだ。

「もちろん、結婚しても店は今まで通り続けてもらってかまわない。というより、ささはらは俺も気に入ってるから続けてほしい」

優しい光を帯びた蒼真の瞳が、里穂を見つめた。

「メイクは人を強くするしメイクひとつで頑張れることもあると言っていたが、君の料理もそうだ。俺はいつも元気をもらっているし君の料理を口にすると明日からもやってやるって気持ちになる」

里穂は言葉を詰まらせ両手を口に当てた。

それこそ店を引き継いだ時に、料理の味とともに父から受け継ぎ残していこうと決めた思いだからだ。

「そう言ってもらえて、うれしいです」

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