離婚前提の妻でも溺愛されています
この七年、試行錯誤を繰り返しながらも店を続けてきた自分の踏ん張りが認めてもらえたようで、グッとくる。

「ご存じだと思いますけど店が老朽化しているのでいつまで続けられるのか不安で悩んでいたんです。でも、決めました。改装してでもまだまだ続けます」

父の夢が詰め込まれた、そして母にとっても父との思い出が残る大切な店。この先も続けていきたい。

「最近来られた建設会社の方がいくつか提案をして下さっているので、相談してみます」

「建設会社? この間の小山とか言っていた不動産会社の営業とはまた別の?」

「そうなんです」

途端に眉をひそめた蒼真に、里穂はうなずいた。

もともと小山以外にも別の不動産会社や建設会社の営業が店に来ることがあり、最近もいくつかの提案を受けている。

基本は店の耐震性強化のための改装だが、移転を希望すればその方向でも相談にのってくれるそうだ。

「うちの店、よっぽど古くて危ないと思われているみたいです。来るひと来るひとみんな改装を勧めるんです」

軽い口調でそう言ったものの、現実はかなりシビアだ。

なるべく早く改装をした方がいい。どの会社の意見も、それだけは一致している。 

最近では客の安全のために本格的な修繕や改装を実施した方がいいだろうと、家族とも話し合っている。

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