離婚前提の妻でも溺愛されています
雫はチラリと里穂に視線を向けた。
わずかに不安が滲む表情に、里穂は笑顔を返し首を横に振る。
「なに言ってるんですか。私は全然かわいそうじゃないですよ」
里穂は雫を意識しながら明るくそう言って、笑い声をあげた。
すると雫の表情がすっと和らぎ、里穂も内心ホッとする。
雫は里穂に店を任せて自分が外の世界で働いていることに罪悪感を抱いている。
けれどそれは、里穂と母も望んでいることで、雫が負い目を感じる必要はない。
むしろ雫には先の見通しがいいとは言えない店にこだわるよりも、超優良企業である杏華堂で働いてほしい。
その方が雫の将来にプラスになるからだ。
雫も頭ではそれがわかっているはずだが、どうしても里穂への負い目を捨てきれずにいるようだ。
「毎日こうして店に立つのが楽しくて仕方がないのに、おかしなことを言わないで下さい」
里穂は雫の気持ちを案じ、言葉を重ねた。
「それに譲るなんて、部長さんに失礼です。大切な方がいらっしゃるに決まってます」
雫から独身だとは聞いているが、桐生のように立場も見た目も申し分ない男性に特別な相手がいないとは思えない。
結婚が決まっていることも十分にありえる。
「それが大切な人はひとりもいないんだよね」
聞き慣れた声が聞こえ顔を向けると、入口の扉をガタガタと音をたてながら開き、恭太郞が顔を覗かせている。
「恭太郞っ」
わずかに不安が滲む表情に、里穂は笑顔を返し首を横に振る。
「なに言ってるんですか。私は全然かわいそうじゃないですよ」
里穂は雫を意識しながら明るくそう言って、笑い声をあげた。
すると雫の表情がすっと和らぎ、里穂も内心ホッとする。
雫は里穂に店を任せて自分が外の世界で働いていることに罪悪感を抱いている。
けれどそれは、里穂と母も望んでいることで、雫が負い目を感じる必要はない。
むしろ雫には先の見通しがいいとは言えない店にこだわるよりも、超優良企業である杏華堂で働いてほしい。
その方が雫の将来にプラスになるからだ。
雫も頭ではそれがわかっているはずだが、どうしても里穂への負い目を捨てきれずにいるようだ。
「毎日こうして店に立つのが楽しくて仕方がないのに、おかしなことを言わないで下さい」
里穂は雫の気持ちを案じ、言葉を重ねた。
「それに譲るなんて、部長さんに失礼です。大切な方がいらっしゃるに決まってます」
雫から独身だとは聞いているが、桐生のように立場も見た目も申し分ない男性に特別な相手がいないとは思えない。
結婚が決まっていることも十分にありえる。
「それが大切な人はひとりもいないんだよね」
聞き慣れた声が聞こえ顔を向けると、入口の扉をガタガタと音をたてながら開き、恭太郞が顔を覗かせている。
「恭太郞っ」