離婚前提の妻でも溺愛されています
「だったら、どうして突然?」
佳也子は不安げにそう言いながら、蒼真と里穂を交互に見やる。
いきなりのことに驚いているだけでなく、里穂のことを心配しているのがよくわかる。
「ご存じの通り、私はいずれ父の後を継いで杏華堂を率いていく立場にいます。結婚すれば妻となる女性に負担がかかるのは避けられません。そこに里穂さんを
巻き込んでいいものか悩んでいたんです」
「まあ……」
丁寧に気持ちを口にする蒼真に、佳也子はみるみる目を潤ませている。
「ですが結局、里穂さんのことをあきらめられず、結婚を申し込みました。二週間ほど前です。メイクの講習会で偶然彼女と顔を合わせた時に、花音ちゃんにピアノを弾いて聞かせる里穂さんの優しさにグッときて――」
「それって確か里穂がお店の仕込みがあるからって帰っちゃったあの日?」
驚く佳也子の声に、里穂は気まずげにうなずいた。
雫も思い出したのか、ハッとした表情を浮かべている。
「そうです。あの日ふたりで桜を見に行って、満開の八重桜の下で、結婚を申し込みました」
「桐生さ……じゃなくて、蒼真さん?」
そこまで詳しく話すとは聞いていない。
里穂は思わず声をかけたが、互いを名前呼びしようと決めていたのについ名字で呼びそうになり、慌てて言い直した。
蒼真は里穂に顔を向け、安心させるように優しく微笑んだ。
佳也子は不安げにそう言いながら、蒼真と里穂を交互に見やる。
いきなりのことに驚いているだけでなく、里穂のことを心配しているのがよくわかる。
「ご存じの通り、私はいずれ父の後を継いで杏華堂を率いていく立場にいます。結婚すれば妻となる女性に負担がかかるのは避けられません。そこに里穂さんを
巻き込んでいいものか悩んでいたんです」
「まあ……」
丁寧に気持ちを口にする蒼真に、佳也子はみるみる目を潤ませている。
「ですが結局、里穂さんのことをあきらめられず、結婚を申し込みました。二週間ほど前です。メイクの講習会で偶然彼女と顔を合わせた時に、花音ちゃんにピアノを弾いて聞かせる里穂さんの優しさにグッときて――」
「それって確か里穂がお店の仕込みがあるからって帰っちゃったあの日?」
驚く佳也子の声に、里穂は気まずげにうなずいた。
雫も思い出したのか、ハッとした表情を浮かべている。
「そうです。あの日ふたりで桜を見に行って、満開の八重桜の下で、結婚を申し込みました」
「桐生さ……じゃなくて、蒼真さん?」
そこまで詳しく話すとは聞いていない。
里穂は思わず声をかけたが、互いを名前呼びしようと決めていたのについ名字で呼びそうになり、慌てて言い直した。
蒼真は里穂に顔を向け、安心させるように優しく微笑んだ。