離婚前提の妻でも溺愛されています
淡々と、それでいて雫の目をまっすぐ見つめながら話す横顔はとても凜々しくて、まるで本気でそう思われているような気がしてでドキドキする。

蒼真はひと呼吸おくと、身体ごと里穂に向き合った。

「愛する妻を幸せにするのは夫として当然のことだ。言葉を選ばず言わせてもらえば、里穂が喜んでくれるなら改装費を用意するくらい大したことじゃない」

不意に摑まれた両手から、蒼真の体温がじわじわと伝わってきて、全身が熱を帯びていくのがわかる。

「あの……?」

里穂は蒼真に両手を委ねたまま、声を震わせた。

店の改装費用のことも佳也子にどう切り出すのかも教えてもらえなかったが、まさかここまでのセリフを考えているとは思わなかった。

本気の気持ちを伝えられている気がして胸が高鳴り、優しい眼差しから目が逸らせない。

「まあ、まあ……」

部屋に佳也子の声が響いた。

顔を向けると、佳也子が真っ赤な顔で里穂たちを見ている。

里穂はとっさに蒼真の手から離れた。

「愛する妻。パパも若い頃はよくそう言ってくれていたのよ。でも、蒼真さんはパパよりも男前で素敵」

「母さんっ」

うっとりつぶやく佳也子に里穂は慌てる。

「だって本当に蒼真さん素敵だもの。それに里穂のことを大切に思ってくれてうれしいわ。里穂も蒼真さんと同じ気持ちみたいだし。こんなに見つめ合っちゃって、見てるこっちの方が照れちゃった。でも」

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