離婚前提の妻でも溺愛されています
佳也子はそこでいったん口を閉じると、それまでの舞い上がった表情をすっと引き締め蒼真を見つめた。

「店の改装の件ですが。安全の面でもなるべく早く改装するべきなのはわかっていますが、お恥ずかしい話、資金面ですぐには対処できません」

「その費用を私に用意させて下さい。里穂のためにというのが一番ですが、私もささはらが好きなので力になりたいんです」

「ありがとうございます。本当なら遠慮するべきだとわかってるんですが」

佳也子はチラリと里穂を見やったあと、一度うなずいた。

「お力をお借りしてもいいでしょうか」

「なに言ってるの……?」

雫が不安げに佳也子に声をかけた。

「もちろんです。すぐにでも伯父に連絡を入れて調査に――」

「ただ、費用はお借りするということでいいでしょうか。毎月少しずつですがお返しします」

佳也子は凜とした声でそう言って、ニッコリと笑った。

「本当にすこーしずつになると思うので申し訳ないんですけど」

「もちろんかまいません。というより、返済のことは気にしていただかなくても」

蒼真の言葉に、佳也子は肩を竦めた。

「ありがとうございます。ここで返済は任せて下さいと言いたいところなんですが、それはどう考えても無理なんです。だから、少しずつお返しさせていただくということで、蒼真さんに甘えさせていただいていいでしょうか」

「母さん」

< 78 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop