離婚前提の妻でも溺愛されています
そして里穂は蒼真の提案で彼が暮らしているマンションに引っ越し、同時に婚姻届を提出することになった。

本来なら結婚式までは里穂も家族と暮らし、婚姻届の提出もそれと同じタイミングで蒼真との同居を始めようと考えていた。

けれど相変わらず里穂たちの結婚に疑問を持っているらしい雫を納得させるために、蒼真との同居を早めたのだ。





そして六月最初の日曜日。

里穂は住み慣れた自宅から蒼真の家に荷物を運び入れた。

自宅から運んだものは段ボール十箱と子どもの頃から愛用しているミシン。

もともと荷物が少ないうえに、家電や家具、主だった生活用品はほとんどそろっているので、嫁入りとは思えないほど簡単に引っ越しは完了した。

佳也子と雫の荷物も仮住まいとなる近所のマンションへの搬入が終わっているはずで、今頃ふたりも片付けに追われているはずだ。

「なにかお手伝いできることはありますか?」

蒼真が里穂のためにと用意してくれた部屋で荷物の整理をひととおり終えた里穂は、リビングに顔を覗かせた。

ここには何度か来ているが、4LDKの広すぎる家にはまだ慣れず、ついキョロキョロしてしまう。

築一年も経っていない室内はどこも綺麗で、玄関床の大理石は艶やかに輝いている。

キッチンや浴室、設備はどれもトップランク。

これまで実家で使っていた三十年ものとの差に驚くばかりだ。

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