離婚前提の妻でも溺愛されています
彼女の家族への愛情を利用したこの結婚に、里穂自身にはなんのメリットもない。

それどころかこれほど早いタイミングで家族から引き離されてしまった。

この結婚に納得できずにいる妹の疑念を払拭するためとはいえ、それを、強行したことへの罪悪感は拭えない。

里穂の行動の理由は、すべて家族のため。

そんな彼女の優しさと強さを知って、これまで結婚するつもりなどなかった気持ちに変化が生まれた。

里穂のように人を思いやれる強さを持った女性となら結婚してもいいと思うようになったのだ。

蒼真が里穂に結婚を提案した理由は、常務の現実味のない企ての芽を早々に摘み、メディカルメイクの存続を確固たるものにすること。

そして恭太郞が里穂に気兼ねすることなく結婚できるようにすることだ。

そんな理由を持ち出されれば、家族思いの里穂が断るわけがない。 

それを見越してのプロポーズだった。

「勝手だよな」

蒼真は自嘲気味につぶやいた。

里穂の幸せなど二の次にして、自身の思惑を押し通してしまった。

結局彼女の優しさと強さに甘えて、結婚したということだ。

その時、スマホがメッセージの着信を告げた。

確認すると伯父の会社の営業からだ。

ささはらの家屋全体の調査が終了し、来週里穂たちと具体的な話し合いを始めると書かれている。

蒼真は当日は自分も参加すると返信した。

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