離婚前提の妻でも溺愛されています
第四章 想定外の優しい新婚生活
第四章 想定外の優しい新婚生活

蒼真との同居が始まって二週間。

当初の緊張が噓のようにふたりの生活は順調だ。

恋愛経験ゼロの里穂にとって男性との同居は未知の世界。

うまくやれるのか不安ばかりだったが、蒼真との生活は思いの外楽しくて、毎日があっという間にすぎていく。

蒼真は初めて顔を合わせた時の印象と変わらず優しく、ふたりでいても話題に困ることもない。

最近では逆に多少の沈黙も気にならないほどの気安い関係が築けつつあると感じている。

不満はないが、ただひとつ驚いたことがあるとすれば。

経済的に余裕があるからか、それとも物に執着がないからか、インテリアコーディネータ―が色やブランドを統一して揃えた家中の家具や生活用品を、里穂の好みに合わせてすべて入れ替えてもいいと真顔で言われたことだ。

驚いただけでなく、生まれ育った環境の違いを改めて痛感した。

もちろんその申し出は丁重に断り、今も家の中は蒼真が越してきた当初から存在感を示している高級家具をはじめ、使い勝手のいい電化製品や生活用品でいっぱいだ。

里穂がここで暮らし始めた当初はソファに座る時にもシミひとつ残してはいけないと緊張していたが、最近では深夜にテレビを見ながらついうとうとしてしまうくらいには慣れてきた。

それは里穂が一日でも早く新しい生活に慣れるようにと配慮してくれる蒼真のおかげだ。

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