カルテとコーヒー
7."覚えてるよ"



秋に入ってすぐ始まった、基礎看護学実習Ⅱ。
たったの2週間が、開始2日ですでに長く感じられた。

記録に追われる毎日。

看護師たちは無視が基本スタンスで、
学生は空気そのもの。
先生は励ましてくれるものの、
なぜか看護師の前では敵と化する。

なんで看護師目指したんだろう…

と、志をへし折るには十分すぎる
ストレスのフルコースだ。

だが、優子は幸い担当患者に恵まれた。

朝の挨拶(もちろん看護師には見えない聞こえない)
を終えて、バイタル測定に向かった。

ドアをノックし、部屋に入る前に手指消毒。


「失礼します」


と患者の前まで行き、
今日こそ観察項目を忘れまいと
頭の中で何度もシミュレーションした流れに入る。


「瀬乃さん、おはようございます。
 昨日ご挨拶に伺った水城です」

「はい、どうぞ」


検温しにきたことを伝え、了承を得て…
とまあひとしきりお決まりなことを終えてから、
優子はベッド横の椅子に腰かけた。

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