カルテとコーヒー
瀬乃に説教されているうちに、
病室のドアが開いた。
優子が想像していた以上の人数が
白衣を着てぞろぞろと病室に入ってきた。
この部屋は多床室で4人部屋だが、
にしても入れる人数に限りはある。
教授を先頭に、恐らく准教授や講師、
助教に下っ端の医師や、学生までいる。
ほんとに、ドラマみたいだな…。
なんてぼーっと見ていると、
隣のベッドでその"教授回診"が始まった。
呼吸器内科の教授が患者に調子はどうかと尋ね、
学生にも聴診やアセスメントをさせている。
学生からしたら、まさに地獄だ。
隣の方を見向きもしないで、
相撲を見ながら瀬乃が呟いた。
「偉いんだか知らないが、
あんなに引き連れいい迷惑だわな。
なんで初対面の若い男に胸見せなきゃなんねぇんだ」
「見せるって言っても、聴診ですよ?」
「女の裸見ようなんて若造には100万年はえぇよ」
「そういうこと、意識してるんだ、瀬乃さん」
「あぁん?文句あんのかい」
「ないない」
慌てて手を振ると、
自分が笑っていることに気づいた。
緊張していた優子に、
瀬乃が気を紛らわそうとしてくれたのだろうか。
「瀬乃さん、見かけによらず優しいですよね」
「さっきから一言余計なんだよ、小娘が」
「ふふ、そういうところだもんな~」
「いいからそこで黙ってな」
「おやおや、随分と楽しそうですねぇ」
カーテンを開けられ、
後ろから声が聞こえた。
絵にかいたようなおじいちゃん先生が
笑顔で瀬乃と優子を見下ろしている。
「っ…!」
そして隣に立つ姿に、
優子は目を見開いた。