カルテとコーヒー
二日後。
自分の考えが甘かったことが嫌でもわかった。
咳は次第に悪化し、
息苦しく屈むことが増えた。
夜になり気温が下がると、
それはますますひどくなった。
先生…
心の中で、何度も呼んだ。
だが、連絡するわけにはいかなかった。
ただでさえ感染症対応で忙しい秀頼に
これ以上迷惑をかけたくなかった。
吸入をしても、よくならない。
恐らく感染したのだろう。
優子にでもわかるほどに、
体調は芳しくない。
主症状と言われる喉の痛みも、高熱もない。
ただただ、咳が出て、息苦しかった。
シャワーから上がると、
その息苦しさはさらに強くなった。
ヒューヒューと鳴る呼吸。
初めて発症した、
あの梅雨の時期以来の苦しさ。
「ハァ…ハァ…」
吸っても吸っても楽にならない。
胸を必死に抑えて、
収まれ、収まれ…
と呪文のように何度も唱える。
自然と涙がこぼれ、
このままじゃ死んでしまうんじゃないか…
そんな考えが頭をよぎり、
優子は震える手でスマホを拾った。