カルテとコーヒー


見慣れた艶のある黒髪、
童顔だが、スラッとした身長、
白衣ではなく、スーツ姿だが

それは確実に、


「先生…?」

「え?」


優子の呟きに南が反応したのも束の間、
マイクを持った森山が話し始めた。


「えぇ~皆さん、はじめまして森山です。
 成人看護学の呼吸器と循環器、
 それから腎・泌尿器を担当します。
 よろしくお願いいたします」


学生全員が揃って頭を下げた。
優子も然り、だが、
どうしても秀頼から目が離せない。

森山がてきぱきとした話し方で続けた。


「そして今年から、この成人看護学の授業では、
 各科のドクターに来ていただき、初回には
 "医師が求める看護師とは何か"についても
 語って頂けることとなりました。

 つきましては、第一回は
 当院の呼吸器内科から、
 藤原秀頼助教に、来ていただきました」


そう言って森山が秀頼にマイクを手渡した。

秀頼が一歩前に出てきたところで、
今日初めて、クラスが少しだけざわついた。

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