カルテとコーヒー


「ご紹介に預かりました、藤原です。
 7階東、呼吸器内科で働いています。

 今回は、森山先生にお声がけ頂き、
 簡単にではありますが、学生の皆さんに
 "是非とも、こんな看護師を目指してほしいな"
 というお話を、疾患や治療について交えながら
 お伝えできればいいかなと思います」


あくまでも私の主観ですので、
私の意見が100%医師や患者さんの声という
わけではありませんが…


何度も何度も聞いてきた声が、
マイクを通すだけで少し別人のそれに聞こえた。

ここにいる誰よりも、あの人のことを
知っているはずなのに。


なぜだろう。


白衣姿じゃないから?
森山先生が隣にいるから?
マイクを持っているから?


いや、そうじゃない。

答えは、シンプルでしょうもないものだ。

もやもやしているこの理由は、

ここにいる、みんなだった。


キラキラした目で、
まるで俳優やスターを見るような眼差しで
秀頼のことを見上げている。

私だけが知っていたはずの、"秀頼先生"。

それが、みんなに取られてしまったような、
そんな気がしているんだ。


心が、もやもやする…。


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