カルテとコーヒー
#4."本当にわかってるのか?"


21時を過ぎた頃。

優子と南は、今日の合コンで
知り合った医学部5年生の2人と
海岸沿いに来ていた。

街に出てちょっと高級なイタリアンを
ご馳走になったあと、
大学近くの海岸を散歩することになったのだ。

今時珍しく、襟足の長い赤髪で
いかにも高そうなブランド服で
身を包んだ彼は、名を中沢と言い、

両親が医者で東都南大学病院の病院長とも
知り合いなのだという。


中沢と並んで、優子と南の後ろを歩くのが
中沢と同学年の医学部、足立だ。

鍛えられたその体にピタッとした半袖と
ジーンズがサマになっていた。

暗闇の中で夜風にあたりながら、
4人は波音をBGMに他愛もない会話を楽しんだ。


「優子ちゃんは、夏には海でも泳ぐの?」


足立が優子の隣に並んできた。


「いえ、海で泳ぐことはそんなないですけど。
 でも船舶免許をとったので、
 クルーズはしてみたいなって思ってます!」

「え、船舶あんの?すげぇじゃん!」

「いえいえ、船を持ってるわけじゃないですし」

「でもスゴイよ〜俺も乗りたいなぁ」


初めて船舶免許に食いついてもらえて
優子はどことなく嬉しくなった。

以前、秀頼に話した時には、


『船を持ってないのに、何に使うんだ?』


と一言言われて終わってしまった。

だから、こうして夏や海の話題で
盛り上がってくれる足立に、
優子は少なからず好印象を抱いていた。

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