カルテとコーヒー
その後も優子は足立との会話に華を咲かせていた。
海岸に停めた車からだいぶ歩いたところで、
中沢と話していた南が言った。
「ねぇ、今度この4人で花火しませんか?
ちょうどこれぐらいの時間に集まって!」
「お、いいねぇ!」
足立が賛成したので、
優子も「やりたい!」と小さく跳ねた。
どこか大人びた様子のある中沢も、
「いいね」と腕を組んで頷いていた。
「あ、私たちいつから夏休みだっけ?」
「えっとね…」
優子と南は額を寄せて互いのスケジュールを確認した。
優子が夏季休暇前にあるテストを
確認しようとスマホを開くと、
「そうだ!連絡先、交換しようよ」
中沢と足立が2人の間に入ってきた。
突然体の距離が近くなり、
思わずドキッとしてしまう。
「あ、はい…!」
優子は言われるがままに自分の連絡先を伝えた。
スマホ画面を見ている足立に、
優子がチラッと目を向けた。
すると、足立の細い目と視線が交わり、
暗くても分かる綺麗な唇が微笑んだ。
なぜだろう。
初めてか、久々か…
とうに忘れてしまっていたような
甘酸っぱさを感じるドキドキを
優子は実感しているのを確信した。