カルテとコーヒー
「バン、パーレ?」
みんなが降りていく階段の手前に、
怪しいネオンに輝く看板が一つ。
『Vanpa-re』
と書かれたその看板の派手さからは
想像もできないほど、
地下の階段は静かで物音もしない。
本当に大丈夫かな…?
そう疑ってしまうほどに真っ暗な先を
みんなは次々と降りていく。
「怖い?」
優子のリアクションを気にしてか、
足立が優しく顔を覗かせた。
「あ、いえ…」
足立の背がそこまで高くないからか、
顔の近さに思わずまたドキッとした。
その途端に、不思議と怖さも
吹き飛んでしまうほどには
優子も酔っぱらっていた。
「記念に写真撮ってもいいですか?」
そう言ってスマホを取り出すと、
「ん?俺と?」
と酔っぱらって少し潤んだ瞳が
こちらを真っ直ぐ見つめていた。
「あ、いえ、その…」
頬が思わず熱くなる。
どぎまぎしていると、
「ははっ、冗談だよ」
そう言って頭をポンと撫でられ、
足立は颯爽と階段を降りていってしまった。