カルテとコーヒー
階段を駆け上がったところで、
優子は目の前の光景に絶句した。
貞操云々どころではなく、
そこはまさに地獄だった。
そこには、
数人の男たちに囲まれて、
お気に入りのニットとスカートを
今にも剝ぎ取られそうな南がいた。
「いいから、暴れんなって」
「大丈夫か?これ。
かなり犯罪くさくね?」
「今更すぎること言ってんじゃねぇよ」
ケラケラと笑う男たちの笑い声。
「やめて!やだ、やだー!」
子どもみたいに暴れる南。
かなりの時間、必死に抵抗したのだろう。
涙で化粧は崩れ、髪も乱れた南は、
すっかり弱って小さく見えた。
それでも懸命に男たちを押しのけていたが、
ついにその手が南の胸元に伸びるところだった。
怖い…
でも、動かなきゃ…
止めなきゃ…!!
「南っ!」
優子が叫ぶと、男たちの動きが止まり、
全員の視線が優子に向いた。
どこにでもいそうな、チャラチャラした男たち。
大学生だろうか。
社会に出ている人間とはとても思えない。
思わず怯みそうになる気持ちを抑えて、
優子はゆっくりと歩を進めた。
「ゆっちゃん~…」
優子が近づいたところで、
南は再び目に涙を浮かべた。