カルテとコーヒー


降りてきた中沢たちには目もくれず、
秀頼と、「潤」と呼ばれた男が、
優子と南を連れて出口へ向かおうとしたその時。


「待ってくださいよ、藤原先生」


中沢がそう言った。

医学部5年生ということは、
本格的に実習で病棟を回っているはず。
秀頼たちのことを知っていて当然だ。

秀頼は応えることなく、足を止めなかった。

が、無理矢理前に男たちが立ちはだかる。

「相手になってやるよ」とでも言いたげな
他人を見下す哀れな表情をした後輩たちに、

秀頼は表情一つ変えることなく言った。


「お前たちも医療者を目指すなら、
 もうこんな場所から足を洗え」


優子が聴いたことのない、
ひどく冷たい声だ。


「あぁ、そうだよなぁ」


応えたのは、随分後ろにいた中沢だった。

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