カタカナは嘘

美化委員


 数日後。

 放課後に私は一人で花壇の手入れをしていた。

 これも美化委員の仕事だ。


 一年生の時は嫌々やっていた美化委員も、慣れてくるとやりがいも出てきた。

 だから二年生になった今も続けている。

 たぶん三年生になっても立候補すると思う。



 その時、突然目の前に何かが落ちてきた。


 ガシャン!


「きゃっ!」


 大きな音とともに、ガラスの破片が飛び散る。


「な、なに?」


 周囲にガラスの破片と、花壇のものではない花が落ちていた。

 どうやら上からガラスの花瓶が落ちてきたらしい。

 花壇のふちに当たって砕けたようだ。

 とっさに上を見上げる。


 しかし、誰もいない。


 ちょうど、上の階には私のクラスがあった。

 時間も経ってるし、みんな帰ってる頃だと思うけど。

 あたりを見回すも、周囲には誰もいない。


「ビックリしたぁ。ど、どうしよう……」


 呆然としながら、しばらく割れたガラスの破片を一人で眺めていると。


「カホー!」


 サヤカがビックリした顔で走ってきた。

 かなり息を切らしている。


「大丈夫? カホ」

「サヤカ………」

「カホ!? なに、何があったの!?」

「んと、うぅ」


 サヤカの顔を見て緊張の糸が切れたのか、私は腰が抜けてしまった。

 地面にへたり込んでる私を見て、サヤカは泣きそうな顔になっている。


「大丈夫? カホ……」

「急に……これが、落ちてきて……」


 私は震えた声で説明し、割れたガラスの破片を指差した。


「ええ!? なんで花瓶が!? 大丈夫! ケガは?」

「ない……」

「そっか、よかったぁ」


 サヤカは泣きそうになりながら、私のことを抱きしめてくれた。


「怖かった……」

「うんうん、危なかったね……」


 その後、しばらくして落ち着いた私たちは職員室へ行き、先生たちに報告した。


 結局、花瓶が落ちた原因はわからなかった。

 風が吹いて落ちるようなものでもないため、かなり不信感があるが。

 先生たちは調査すると言ってくれたけど、どこまであてになるかはわからない……。
< 7 / 13 >

この作品をシェア

pagetop