he said , she said
瞳子がそこに気づいてくれるといいのだが…しかし、連絡をよこしてきたのは寺島だ。
あの三人の女性の関係性なら、訪問客が辞した後の部屋の片付けは瞳子と村瀬の役割だろう。
茶を出してくれたのも瞳子だった。

つまり、と直弥は想像を働かせる。
ボールペンを見つけた瞳子はどうするか。独断でこちらに連絡せずに寺島に報告したのだろう。

忘れ物があったんですが、と。そして寺島は言った。
「わたしが連絡しておくわ」

自己顕示欲が強い女だった。いかにも後輩の手柄を横取りしそうだ。
しかしおだてに弱い単純さがあり、喋っている内容を聞く限りそれなりの思考力はある。

あの年増女から情報を引き出すのもありだなと、直弥はメールの返信を打ち始める。
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