he said , she said
「あとで店みつくろって、リスト送りますよ」
実に話が早い。
「人気の店はホントに予約が取れないっすね。半年先まで埋まってます。なんとかならないかってお得意さんからよく聞かれるんですけど」とこぼす。
「美食ブームは衰えないな」
井出も直弥もいわゆる美食家や食通ではない。
男二人のこうした見栄のいらない場では、居酒屋にケが生えたような店で十分だった。
砂肝のごま油風味、だし巻き卵といったありきたりな肴をいくつか頼んで、ビールを飲んでいる。
「京都の有名割烹で修行した板前が独立して、全国各地から取り寄せた食材を使って腕をふるう創作懐石、なんていうとコースで二万五千円で満席です。ものの味というより、◯◯で食べた、▲▲も行ったけどなかなかだったな、なんて仲間内で言い合うためにあるようなもんですよ」
自嘲混じりの言葉だ。
井出は軽薄なだけの男ではない。これが自分の渡世だと分かったうえで小物に徹しているのだ。
「うちの若手が飲み会やりたいって言ってるから、今度セッティングしてよ。業務提携先の連中も乗ってくるかも」
見返りに直弥は自分の人脈を与えてやる。
「いいすね、キレイどころを揃えますよ」
酒と美食を媒介に、男と女、人と人を繋げていく。
ある意味win-winだと、直弥はビールジョッキを傾ける。
実に話が早い。
「人気の店はホントに予約が取れないっすね。半年先まで埋まってます。なんとかならないかってお得意さんからよく聞かれるんですけど」とこぼす。
「美食ブームは衰えないな」
井出も直弥もいわゆる美食家や食通ではない。
男二人のこうした見栄のいらない場では、居酒屋にケが生えたような店で十分だった。
砂肝のごま油風味、だし巻き卵といったありきたりな肴をいくつか頼んで、ビールを飲んでいる。
「京都の有名割烹で修行した板前が独立して、全国各地から取り寄せた食材を使って腕をふるう創作懐石、なんていうとコースで二万五千円で満席です。ものの味というより、◯◯で食べた、▲▲も行ったけどなかなかだったな、なんて仲間内で言い合うためにあるようなもんですよ」
自嘲混じりの言葉だ。
井出は軽薄なだけの男ではない。これが自分の渡世だと分かったうえで小物に徹しているのだ。
「うちの若手が飲み会やりたいって言ってるから、今度セッティングしてよ。業務提携先の連中も乗ってくるかも」
見返りに直弥は自分の人脈を与えてやる。
「いいすね、キレイどころを揃えますよ」
酒と美食を媒介に、男と女、人と人を繋げていく。
ある意味win-winだと、直弥はビールジョッキを傾ける。