he said , she said
それを好もしいと直弥は感じていた。
どこもかしこもつるりと脱毛がゆき届き、眉にはアートメイクが施され、シャワーを浴びてももはやどれが素顔なのか分からない。
そんな女性たちの美への意識の高さ、というより執念は賞賛すべきなのだろうが、なぜか数を重ねるほどに、誰もかれも同じに見えてくるから不思議だ。

瞳子の “自然さ” に自分は心動かされている、もっと直截(ちょくせつ)にいえば、そそられているのだ。


美術館を出た後は、足の向くまま二人で少し歩いた。
余韻にひたるのがいい。デートプランを最初から最後まで組んでおくなど中学生のやることだ。
流れにまかせる余裕を見せる。

ちょうど通りにスタバがあったので「お茶しましょうか」と声をかけた。

テーブル席は満席だったが、カウンターに二人並んでかけることができた。
この際、隣り合って座れたほうが好都合だった。

瞳子は抹茶フレーバーの飲み物を選んでいた。迷う様子がなかったので、彼女のお気に入りなのだろう。
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