he said , she said
女性を物色する場ではまったくないのだが、常にアンテナを張っているのは、これはもう男の(さが)というものだろう。
結婚も人生の大きなプロジェクトだ。失敗はしたくないものだ。相手選びは特に慎重に、である。

総務、人事、経理部門のプロジェクト担当として現れたのが、ここにいる三名の女性だった。

「お忙しい業務のかたわら、お時間を頂くことになりますが」
津島の口調はこの上なく丁重だ。

「いえ社を挙げてのプロジェクトですので、こちらこそよろしくお願いいたします」
白い歯をのぞかせて口を開いたのは寺島だ。

おや、と直弥は彼女に観察の目を向ける。

「IT部門からの話によると、現行の機能をベースとしてバージョンアップさせたシステムの完成を目標にするということでしたが」

おっしゃる通りですと津島が鷹揚にうなずく。

年齢や役職もあるのだろう。寺島が話を進め、後の二人は聞き役に努めている。
「開発、試作、移行期間と約二年ですから長丁場になりますね」
よどみなく唇に乗せながら、津島と直弥に視線をあててくる。
< 4 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop