he said , she said
無理に話題をひねり出さなくとも、会話はスムーズに続いた。
ここでぬか喜びしないほうがいい。互いのことをまだよく知らないうちは、質問することが豊富にあるからだ。
本当に相性がいいかどうかは会う回数を重ねて、そして最終的にはベッドで確かめることだ。

とはいえ瞳子の、控えめながら自分の意見をきちんと口にし、こちらに対して妙な(こび)がないところは、直弥の求めるところそのものだった。

まだ二人が会うには理由づけが必要だ。瞳子が “乗ってきやすそう” な誘いを探る。
服もバッグも腕時計も、これみよがしなブランド品は身につけていない女性。形に残るものより心に残るもの…
映画、テーマパーク、グルメ…悪くないが、どれもありきたりに思えた。

「今日ミュージアムショップ覗けばよかったな。一人暮らしもそこそこ長くなったので、インテリアに凝りたくなってきたんですよ」
混雑していたので早々に出てきてしまったのだ。

「美術館のショップって限定品もあって、見てると楽しいですよね」

「最近じゃ転売屋がわいて大変らしいですけど」

困ったものですね、と瞳子が眉を寄せる。
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