he said , she said
第四章/籠める


「———何万とあります機械の部品番号は、システムが変わっても引き継いでもらいたいです。いきなり別のものになってしまったら、間違いなくオペレーションに混乱をきたします」

サカキの製造部門の面々は、一人の言葉に同席している全員が無言でうなずいて同意を表す。

「もちろん、そちらに関しては対応させていただきます。昨日と変わらず、そして今以上に業務をスムーズにできるようにするのが完成目標ですので」
直弥は請け合ってみせるが、場の雰囲気は固い。

製造や物流部門のプロジェクトメンバーは年配の男性が圧倒的に多く、考え方ははっきりと保守的だ。
長年手足のように使ってきたシステムが新しくなることがどうしても不安なのだろう。

あれも変えないでほしい、この機能も残してくれないと困る、という彼らの切実な要望を、直弥は一つ一つタスクに加えてゆく。

むろんプロジェクトは完遂してみせる。
プロとして対価に見合う商品を提供するのは当然だが、サカキという会社に個人的な思い入れも加わった。

今この会社には、直弥の彼女がいるのだ。
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