he said , she said
軽いジャブは実のところ瞳子に向けてのものだ。

ハエトリグサ村瀬は、あからさまにつまらなそうにまつ毛を伏せ、口角がへの字に曲がっている。
声のことであっても、他の女性が「キレイ」と言われて賛辞を受けているのが気に食わないのだ。
そのプライドの高さが男を遠ざけているとも気づかずに。

瞳子はといえば、表情には出さないよう自重しているものの、感心したようなまなざしをこちらに向けている。

そうでなくてはと、直弥は内心深くうなずいた。
さて、まずはどうやってこの女性、暮林瞳子と二人で話す機会を作るかだ。
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