he said , she said

第二章/手繰る



お前の女の、というか結婚相手に求める条件がそれじゃ厳しすぎるぞ。

また従兄弟にして社長の津島に、なんとはなしに結婚についての持論を口にしたら、そう呆れられたものだ。
ハードルは高いほど乗り越えた達成感は大きいものだ。なにより自分は選べる立場だと自負していた。

直弥の生まれ育ちはいたって平凡だ。
実家は東京近郊のベッドタウンとして開発された新興住宅地の一戸建てで、サラリーマンの父親と専業主婦の母親、三歳違いの兄がいる四人家族だ。
父親は早稲田の理工学部を卒業して、大手電子メーカーのエンジニアとして定年まで勤め上げた。
勤勉で優秀というサラリーマンの鑑のような人材だったことだろう。

知能の80%は遺伝で決定されるというから、自分の脳みその出来の多くは父親から譲り受けたものだろうし、直弥はそこに深く感謝している。
しかし自分は時流に乗りもう少し、いやかなり利に聡く生きることにしたわけだ。

国立大学の経済学部を卒業したのち、就職先に選んだのはスマホ向けのゲームアプリを開発している会社だった。
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