he said , she said
それから三年近く経とうとしている。
直弥は今年で29歳になる。

仕事は順調だ。父親が同じ歳の頃と比較すれば目を()くであろう額の収入も手にしている。
東京という街で金があれば、あらゆる種類のきれいな女性と知り合い遊ぶことができる。
もちろんそれもまた一通り体験した。刺激と浪費と享楽と…。

かなり羽目を外したこともあったし、それはそれでいい思い出だ。
ぼちぼち結婚という安定した大地を求めてもいいだろう。

高学歴、高収入に加えて並以上の容姿も持ち合わせていた。今どきの女性がもっとも好むクセのない爽やかな顔立ちをしている。
おかげさまで寄ってくる女性は引きも切らない。

しかしこれがまた自分のめんどくさいところで、狙って落とさないと達成感が得られないのだ。
厄介な性分だが仕方ない。

抜け目なさと立ち回りの上手さは、津島も認めるところだ。
ひとつプロジェクトと並行して暮林瞳子に注力することにしよう。

すでに小さな仕掛けを施してきた。
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