エリートなあなた


改めて栗色をした髪色と瞳は、まさに現代のプリンスのよう。綺麗、としか言えないその顔を前にドギマギする。


「吉川さんって、」


「は、はい…?」

向き合うだけで緊張感を生み出すのだから、エリートと呼ばれている理由も納得だ。


「――仕事、楽しくないでしょ?」

「へっ?」

「意外とドアの向こうの音も届くから、注意した方が良いよ?」


「えっ!?あ、えっ…」


間の抜けた声を漏らす私とは対照的に、ダークグレイの眼差しはどこか無機質な色をしていた。


――溜め息を吐き出したのがバレていた。真っ直ぐ向けられる瞳になす術もなく、ただ苦笑いを浮かべる。


< 10 / 367 >

この作品をシェア

pagetop